中古マンションの取引件数は、もっと前から新築を超えている
「首都圏の中古マンション成約件数が新築マンション供給戸数を超えた」、「新築信仰が薄れた!?」、「良質な中古が評価されている」といった記事を見つけたら、要注意である。
首都圏の中古マンション市場動向は、東日本不動産流通機構が発表元である。ここで成約報告を義務付けているのは専任取引のみで、一般媒介は任意。直接、同団体へ確認したところ「それに加えて業者を介さない直接取引も含めると実際の件数はもっと多い。報告を義務付けされていない一般媒介取引も含め、かなり前から中古が上回っているという見方はその通りでしょう」ということであった。
1994年以降、十数年続いた年間8万戸レベルの大量供給から、現在の新築マンション供給戸数は半分以下(2018年実績:3万7132戸)である。国土交通省調べでは中古マンションを買った理由に「欲しい地域に新築がなかった」と16.0%の人が回答している。一方、新築マンションを買った人の60.6%が「新築だから」を理由にしている。したがって、新築信仰が薄れたとは言い難い。
ただし、良質な中古が評価されている、はその通りだ。2000年品確法により「売主は10年間の瑕疵担保責任を義務付けられ」「建設性能評価書を取得していれば売主とのトラブルの紛争処理を1万円で依頼できる」から。売主が倒産しても瑕疵担責任が履行できるよう、資力確保も義務付けられた(2007年施行「瑕疵担保履行法」)。これは、ヒューザーの耐震偽造問題が要請した法令といえる。
成約単価は高水準維持。都心3区は高値更新
さて、肝心な相場。下のグラフは、東日本不動産流通機構発表「23区エリア別、中古マンション成約単価」推移である。安定的にゆるやかな上昇基調を続けている。数字の記載は最高値を記録した地点。都心3区は2019年8月最新値で最高値を付けた。
在庫も安定。2020年をにらみ、相場は再び上昇するのか?
在庫件数も安定している。2018年年初に在庫増の予兆があったがその後は上下を繰り返し、中期的には大きな変化が無い(増えていない)。エリア別特徴も際立つものがない。消費再増税後の展開は注目だが、特段の変化が見られず、「2020年を境とした市場の弱含みが傾向としてあらわれないと認識された場合」、心理的なタガが外れ、相場は上昇に転じる可能性もあるのではないか。