2020年3月17日、不動産経済研究所は「2020年2月度 首都圏マンション市場動向調査」を発表した。2月は、コロナウィルスによる一連の経済活動への支障などが、まだ不動産市場には明確に及んでいなかった時期だ。しかし、だからこそ2月時点のデータを今後を見るうえでの目安とし、その影響の大きさを時間とともに追っていきたい。
発売戸数は、相変わらず低迷
下のグラフは、新築マンションの売れ行きを示す「契約率」「販売単価」を折れ線グラフで、「発売戸数」「在庫戸数(凡例は:翌月繰越販売在庫数)」「完成在庫数」を棒グラフであらわしている。契約率は好不調の目安とされる70%に赤い線を引いてある。
長期のトレンドを理解してもらうため、各グラフ(とくに棒グラフ)の細かな値が読み取りにくいが、2月に限っていえば「発売戸数」が際立って低い。業界関係者ならすぐにわかることだが、例年2月という時期は「年明け集客を開始して得た来場者をクロージングするタイミングにあたる」
したがって、「今年のマンション市況はを占う」ための材料として「1月の成人式のある3連休の集客数」と「2月にどれだけ売り出せたか」は事業の指標として重みをもつ。もっといえば、「3末引渡しをどこまで伸ばせるか」イコール「今期の売上は達成できるか」を計る重要な値なのである。
最も、業績好調な業界なので、昨今は「今期の数字に追われる」こともないだろう。前年比で発売戸数「-35.7%」と大幅下落であるが、それでも会社全体では最高益更新をクリアできるほど大手各社は商況が良い。
コロナウィルスの影響は3月以降か!?
一連のコロナウィルスの影響は、3月以降の数字にあらわれるだろう。飲食店やホテル業、旅行業などにくらべれば、住宅業界へのダメージはすぐに直結する印象は薄いかもしれない。
しかし、マイホーム購入は、人生の一大イベントのひとつでもあり「マーケットのムードは無関係」とは言い難い。額が大きいだけに、「今買って大丈夫か?」と不安になりがちだ。
また、市況をけん引する都心部の高額物件を検討する富裕層は殊の外市況に敏感である。彼らが静観に入れば「市場データは間違いなく下がり」それが「ムードをさらに押し下げる」。このようにして不動産景気は連鎖するのだ。
不動産業界で見れば、ホテルや商業施設へのダメージは多大で、多角化してきた故に大手デベロッパーと言えども「終わりが見えないなか」「数字を伸ばせる分野に注力する」と考えるのが妥当。「時間を使っていたマンション販売のペースを上げよう」と考えるかもしれない。そうなれば価格弾力性も期待できる。
完成在庫比率をベンチマーク
下のグラフは、上の「在庫戸数」と「完成在庫戸数」の推移を「この2年にフォーカス」し、「完成在庫比率」(橙色の折れ線グラフ)を加えた。
このようにしてみれば、2019年前半の商況は「完成在庫を順調に減らせた」とみることができる。この2年をみても、完成在庫比率は比較的安定していたように見受けられる。3月以降の動向に注目したい。