SNSでは「中古マンションが高騰!」「今買わないと損!」といった煽り気味の投稿が目立ちます。しかし、実際のマーケットは単純な高値事例だけで語れるほど単純ではありません。この記事では、具体的な港区の売却希望価格の事例をもとに「そんな値段でもあるんだ」と知ってもらったうえで、情報収集・判断のポイントについて解説します。
港区中古マンションの売出価格事例(一例)
- 1983年築 / 白金 / 坪289万円
- 1978年築 / 南青山 / 坪411万円
- 2002年築 / 海岸 / 坪437万円
- 1983年築 / 三田 / 坪446万円
- 2005年築 / 品川 / 坪460万円
これらはすべて所有権、ワンルームではない物件です。情報は先週時点のもので、すでに成約済みのものも含まれます(大手仲介会社HPから抜粋)
港区の価格推移と背景
港区のマンション平均売買価格は、23区内で最も高い伸び率を記録しています。背景には以下の要因があります。
- 都心部への人口集中とブランド力
港区は都心の一等地として、ブランド力と利便性の高さが資産価値を押し上げています。 - 再開発の進展
虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズなどの大規模再開発が進み、街の魅力や利便性が向上しています。 - 中古市場の活況
リノベーション済み物件への関心や立地重視のニーズにより、築年数が古くても立地が良ければ高値で取引される傾向があります。 - インバウンド需要
海外投資家や富裕層からの需要も根強く、特に築浅・広めのタワーマンションは坪単価1,000万円超の成約も珍しくありません。
個別事例と「上澄み」情報の落とし穴
とはいえ、SNSでよく見かける「坪〇〇〇万円超!」といった事例は、築浅・駅近・高層階・眺望良好といった希少性の高い物件や、タワーマンションの一部住戸等に限定されています。実際には、立地や築年数、広さ、陽当たり、前立て、設備のグレード等によって価格は大きく異なります。上記のような「平均より安い」事例も数多く存在しており、マーケット全体を一部の高額事例だけで判断するのは危険です。
また、同じ港区内でもエリアによって価格差が大きく、麻布・芝・高輪・芝浦などで成約坪単価は大きく異なります。
今のマーケットはボラティリティが高い
2024年以降、都心部の中古マンション価格は高止まり~やや横ばい傾向ですが、月単位で見ると大きく上下する局面も増えています。その背景には、金利動向や為替、海外投資家の動向、国内の景気見通しなど多くの不確定要素が絡み合っています。
情報収集・判断のポイント
- 信頼できる情報源を活用する
不動産ポータルサイトや業界団体の公式データ、信頼できる仲介会社のレポートなど、一次情報に近いソースを重視しましょう。 - 複数の事例を比較する
1件の高値事例ではなく、築年数・広さ・立地ごとに複数の成約事例を比較することで、相場の実態が見えてきます。 - 一定期間の動向を観察する
短期的な変動に惑わされず、数か月~1年程度の価格推移や成約件数の流れを見て、市場のトレンドを把握しましょう。 - 自分なりの市況観・将来シナリオを持つ
SNSの煽りや一部の意見に流されず、自分自身で情報を整理・分析し、自分なりの「市況観」「相場観」を持ったうえで、将来のシナリオを組み立てて判断することが大切です。
「マーケットは、決して“高値事例の上澄み”だけで動いているわけではありません。SNSの賑やかな声に惑わされず、冷静に丁寧に情報を集めて、自分なりの判断軸を持ちましょう。」
まとめ
港区の中古マンション市場は、確かに過去最高水準の価格帯にありますが、その内実は物件ごと・エリアごとに大きく異なり、決して一枚岩ではありません。今はボラティリティの高い局面です。SNSの煽りや一部の高値事例に振り回されず、信頼できる情報源から丁寧にデータを集め、冷静に比較・分析したうえで、自分なりの相場観を持って行動することが、後悔しない不動産取引への第一歩です。