丸い部屋とルーフバルコニー
「デザイナーズマンションという言い方はそろそろやめたほうがいい」。ある著名建築家は本誌のインタビュー記事でそう語った。7、8年前くらいだっただろうか。定義も使われ方も無秩序ながら、一般ユーザーからは高い関心を集めるといアンマッチな現象が続いていたころのことだ。それはデベロッパーがグッドデザイン賞のエントリーに注力しはじめたころでもあった。
デザインの論議は別の機会に譲るとして、マンションのデザインが着目されはじめたターニングポイントはいつか。もし「デザイナーズマンション第一号はどれ?」と問われたら、躊躇なくこの1棟を挙げるだろう。
(略)
さらにこの間取りの特長を語る上で、外すことのできないのが南に広がるルーフバルコニー。植裁のスペースも含め、11坪以上もの広さがある。
「ありきたりな家には、ありきたりな暮らししか宿らない」。これは家づくりをテーマにした映画で、建築家が施主に向かって発したセリフ。こんな図面を眺めていると、つい思い出してしまうワンシーンである。
資料提供:旭化成不動産レジデンス
一戸建て感覚の四面採光
LD壁は半分以上が開口
このラウンド部分はマンションの中庭(パティオ)のほぼ中央に位置している。ちょうど、個性的な棟の象徴のような存在だ。270°円形の空間を前に、「家具はどこに置けばいいの?」という固定観念を払拭しなければ、住みこなすのはちょっと難しいかもしれない。
杉並区荻窪3丁目。JR中央線「荻窪」駅から徒歩10分。現地周辺は建ぺい・容積率が50%:100%に指定された閑静な第一種低層住居専用地域。“戸建て街に相応しいマンションを”をコンセプトに建てられた。周囲と軒を合わせるため、敷地目一杯に壁を膨らませ、中庭をたっぷりと設けている。地上3階建て、総戸数は21戸。分譲は旭化成ホームズほか。設計はアーキテクツオフィス。施工は清水建設。1996年竣工。
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住み替え、リフォームの参考にしたいマンションの間取り―「都心に住むby suumo」(リクルートホールディングス)