構造とインテリアの関係
「収納を十分確保して、スッキリと暮らしたい」。そう願う人がどれほど多いことか。モデルルームでは物入れチェックに余念がない。しかし冷静になって考えてみよう。いくら住みはじめは片付いていても、住むうちに、モノは次第にたまるもの。そう考えれば、家具の追加やDIYで棚を設けるなど必要に応じて対処を施すことが現実的だ。
そこで、ひとつアドバイスを。モデルルームでは、少し視界を広げて空間を眺めてみよう。家具レイアウトがしやすいかどうかを把握するために。柱や梁の出っ張りは、空間の使い方を非効率にするだけでなく、リフォームで解決することのできない短所だ。もちろん、凸凹のない壁や天井は見た目にもすっきりとして、居心地も良い。
上の図面は「本郷パークハウス プレミアフォート」80Fタイプ。『TWFS工法』といって、肉厚の壁と床で建築する手法を採用した。出っ張りがない開放的な空間が間取りからも窺えよう。上層階から大開口の窓越しに見る景色は、まるで空飛ぶ絨毯の上にいる(つまり空に浮いているような)感覚。もちろん、そんな実体験はないのだけれど。
本来、構造や工法という言葉を聞いて、まず連想するのが耐震性能ではないか。震災以降、免震や制震といった用語を耳にする機会も増えたはず。ところが、構造は、外観デザインや室内空間など、日常的な暮らしに幅広く影響を及ぼすものと理解したい。
自分好みのインテリアにしてみたいという人は多いが、そのために構造や工法を知ろうとする人はどれだけいるだろうか。満足のいく住空間を得る近道は、意外なところに隠されている。
資料提供:三菱地所レジデンス
柱梁がない高層からの眺めは未体験の世界
5階建てが限界とされる壁式構造を、免震と組み合わせることにより、中高層建物に採用するケースが増加。とはいえ施工例はまだ僅か。柱や梁のない空間からの、ガラス手すり越しに見える景色は、何とも異次元に近い感覚。今後人気が高まりそうな予感がする。
文京区本郷。都営三田線「春日」駅から徒歩5分。地上14階建て、総戸数207戸。立地は起伏の激しい文京区の丘の上。免震の採用、EVを3戸につき1基設置したプライバシーの高さ、壁式構造ならではの大きなガラス面の外観デザインも特徴。2009年グッドデザイン賞を受賞。分譲は三菱地所ほか。設計施工は銭高組。2008年竣工。
著書「住み替え、リフォームの参考にしたいマンションの間取り(『都心に住む by SUUMO』 連載企画 【間取りに恋して】再編)」より転載