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マンションから戸建てへの住み替えを失敗しないために

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 新型コロナウイルスの影響でマンションから戸建てに住み替えを検討し始めた世帯が増えている模様です。ここでは、一戸建てならではの特徴をまとめ、注意点を整理します。マンション購入にはなかったプロセスが多いことに驚かれるかもしれません。

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一戸建ての特徴:メリットとデメリット

 マンションと戸建ての最大の違いは何でしょうか。それは、土地と建物を別の財産として考える戸建て対し、それらを一体とする(=切り離せない)区分所有としてのマンション、ここに違いがあると考えます。

 したがって、一戸建てのメリットは以下のように挙げることができます。

・建物の建て替えやリフォームが自由にできる。
・外構の使い方(車庫や庭など)、変更も自由にできる。
・土地を分筆して、多目的な活用(例:アパート併用)もできる。
など

 また、マンションに比べ戸建てが大きく異なる点は以下になります。

・建築規制、制限の理解は不可避
・管理修繕は、何から何まで自己責任
・独立した建物

駐車場代がかからない、ペットを自由に飼える、といったメリットがよく謳われますが、これらはすべて自己所有の土地建物だから使い方は自分で決めて構わないということです。また、上下左右の音を気にせずに済むというのは、建物が独立しているから。

 逆に、マンションと比べた場合の戸建てのデメリットは一般的には以下の項目がよく挙がるようです。

・眺望、見晴らしが得にくい
・グレード感に劣る
・セキュリティが弱い
・庭の手入れ等が大変

これらは、高度利用・集合住宅(規模のメリット≒調達コスト低減効果)としてまとめることができます。

したがって、マンションから戸建てへの住む替えを検討する場合は、根本的な違いである「建築規制・制限を理解」して「管理や修繕に留意」することが重要。さらには「自由に使える」「独立した建物」であることのメリットを最大化できれば、成功する確率は格段に上がるだろうと思われます。

物件検討の際の注意点:土地と建物の見方

 では、具体的に何に注意すればよいかを整理します。

土地取引の基礎知識:用途地域

 用地地域は、商業系・工業系・住居系の3種類があり、さらにそれぞれに細かく分類されています。いまでは、行政のHPで見ることができますので、検討している土地がどの用途地域に属し、周辺も含めて「街づくり」の基本的なゾーニングを理解します。

土地取引の基礎知識:建ぺい率/容積率

 次に、用途地域に則して定められている「建蔽率」「容積率」を確認します。建蔽率は、敷地面積に対する建築面積の割合、容積率は敷地面積に対する延床面積の割合です。この値で街の景観が決まります。その他に高さ制限や日影規制があります。いずれも建物の大きさや形等に影響しますので一通り理解する必要があるでしょう。

土地取引の基礎知識:敷地境界線

 土地を買って引渡しを受ける場合、必ず必要な作業は敷地境界線が明確になった図面をチェックすることです。すべての境界杭に関係者が同意した資料と引き換えに決済すること。万が一、境界が確定していない場合はリスクを負うことになるので注意してください。

土地取引の基礎知識:ブロック塀

 やや細かな話になりますが、ブロック塀を敷地境界にしている場合は、塀の耐震性も事前に確認しましょう。地震でなくても古い塀の倒壊が事故につながった例もあります。

土地取引の基礎知識:地盤

 周辺の街並みを見れば概ね把握はできますが、地盤の強度は地震ハザードステーションや地理院地図などで強度や地形を知ることができます。また液状化予測についても確認しておくことをお奨めします。

参考サイト
地震ハザードステーション
地理院地図
東京都液状化予測

土地取引の基礎知識:価格相場

 購入を検討している土地の妥当な価格はいくらか?といった算出は、簡単な作業ではありません。最も近い場所に位置する取引事例を参考にするケースや地価公示のある地点と検討している土地の地点の路線価の差を比例してみるのもひとつのアイデアでしょう。

土地取引の基礎知識:道路付け

 土地の評価は道次第、と言っても過言ではありません。道路幅や接道する間口の広さは建築を制限することにもなりえますから、接道状態は重要です。また公道と私道では評価が異なる場合があります。

 道路は幅員4m以上が建築条件を満たすとされ、それ以下の場合は道路の中心線から2mの範囲を道路として提供する必要があります(42条2項道路)。「セットバック」と呼ばれる部分で自由には使えなくなります。

建物取引の基礎知識:傾き、耐震性、設備

 建物は、土地と違って「築年数」や「リフォームをするかしないか」等、状態と住み替え後のプランによって重要度が大きく異なります。また、建物は見えない部分が大事なので、素人には判断できない箇所が多いです。

 比較的判断が困難なのは「傾き」、次に「耐震性(竣工時による)」。雨漏りやシロアリ被害等は契約内容(瑕疵担保責任)を決める際に交渉しておくべきでしょう。

 設備は、交換や修理の履歴を聞いておきましょう。とくに給湯器は耐用年数が相対的に短いので注意が必要です。

 間取り、収納、窓の位置など戸建てのプランはマンション以上にピンキリの印象が強いです。そのままの状態で使う場合は、よく吟味することです。建具や内装も同様の観点を持って。

不可欠なパートナーは「時間と建築士」

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 ここまで読み進めてみて「なんか、一戸建てはマンションよりも面倒だなあ」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、これも戸建てならではの自由を満喫するための準備です。

 状態の良い建物を手に入れることができれば、管理・修繕コストは長期的に安くあげることができます。

 さらに言えば、万全のチェックをして土地を買えば、地震や水害など自然災害にも恐れず暮らすことができるでしょう。利用価値の高い土地を持てば、財産形成の一助にもなるかもしれません。建物が老朽化しても、建て替えれば住まいとしての価値は復活します。更地で売却すれば、次の住まいの資金に充てることも可能です。

 土地の価値を検討する場合、ロケーションの評価は素人でもできなくはないですが、建築制限を細かくチェックすることはできません。例えば、日影規制で建物の位置や形状(天井など)に影響が出そうか、などです。また、中古であれば建物の性能を把握する作業も同様です。

 そこで、土地や中古戸建てを検討する場合は、プロにいつでも相談できる体制をあらかじめ整えておくことをお奨めします。工務店やハウスメーカー、リフォーム業者などです。先に信頼できるパートナーを決めておくことで、検討作業にプロの目を入れることができ「失敗・後悔の確率を大きく低減させる」ことができるはずです。

 建物の内側だけでなく、外構にも工夫を施せる戸建ての魅力は無限大です。メリットとデメリットを把握して、リスクを抑えて利点を最大化できれば、マンションでは得ることが難しい「自由で快適な暮らし」が待っています。

参考サイト
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5.マンションの価値とそれを定める4つの座標軸


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「都心に住むby suumo」(リクルートホールディングス)
連載『間取りに恋して』(2012年3月~2018年8月)再編集
住み替え、リフォームの参考にしたいマンションの間取り



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