デベ直営、地域密着型宿泊施設&レストラン
ホテルは専門外。なので、サービスやハードをレポートするわけでもない。記録しておこうと思ったのはデベロッパー直営だったから。かつてマンション関連の仕事で知り合った人(私と同年代)が経営に携わってもいる。どういう雰囲気なのか、一度見てみたいと思ったわけだ。
2019年12月某日。「ノーガホテル 上野 東京」公式サイトには地下鉄「上野」駅徒歩3分、JR「上野」駅徒歩5分とある。JR改札口からペデストリアンデッキで国道4号線を渡り、歩いて数分のところにあった。小さな雑居ビルが立ち並ぶ一画。小綺麗でモダンな雰囲気のホテルが「突然目の前にあらわれた」。そんな第一印象だった。
中がダイニング。外から様子が見える。1階ガラス張りの建物とそれを取り囲む植栽をまわり込むようにして、マンションのエントランスのような「出入り口」を見つけ、入った。いわゆるホテルのロビーを思わせる長いカウンターなどはなく、デニムをはいたスタッフが数名いて、すぐに話しかけられた。ノーガホテルは「地域に溶け込むホテル」が謳い文句。1階は宿泊客以外をどんどん招き入れることがねらいのようだが、それだけに玄関口でのさばきはポイントなのかもしれない。「できるだけ敷居は低く」しかし「セキュリティとホスピタリティはホテル並みを目指す」ということのようだ。
数日前に、たまたまこんな記事を見つけた。サービスをつくるのは、自分の渇きを癒すためだった。/ CHILLNN創業エントリ
弁天町と比べることはできないが、今までにないホテル業態(というか、恐らくはまだそれほど世の中に認知されていないと思われる「カジュアルでも日常とは少し違う何かを提供してくれる空間とサービス」)が増えているらしい。例えばこの2例に共通しているひとつは立地の個性だと思う。
周辺の価値を変えていく建物
住居地域に立つ「板状型マンション」と駅前など商業系や準工地域に立つ「タワー型マンション」。マンションが大きく2つに大別できるとするならば、このホテルの立地はいずれにも属さないと思う。かつての、東北地方からの玄関口であった「上野」の繁華街の風情が残る、しかしながら駅5分圏内の高い利便性を併せ持つ。コンパクトマンションニーズも考えられるが、所有権では周辺環境の好みが分かれると思われるため、販売単価は思ったほど伸びないかもしれない。
アベノミクスで円安が進行し、訪日外国人増加に拍車がかかった。ホテルニーズの高まりはおさまらない。マンションの用地仕入は「入札でことごとくホテルに負ける」(大手マンションデベ役員)。このコメントは「事業採算上、分譲マンションや満室経営の賃貸マンションより稼働率の高いホテルのほうが儲かる」と言っている。
周囲を見ると、敷地目いっぱいに建物を建てた小さなビルが多い。そのなかで、パラソルとチェアを配置したホテルのオープンスペースは、景観に少しのゆとりを提供している。飲み屋街は昼間閑散としがちだが、ランチに訪れるのは女性客が多く、人の流れを微力ながらも変えているとも受け取れる。不動産開発事業は「立地の見極め」「個性の見立て」が肝心だが、このノウハウはコンセプト型ホテルの用地買収にも活かされるのではないかと感じた。
「ノーガホテル 秋葉原 東京」7/1開業
昨日、野村不動産から「ノーガホテル」第2弾のリリースが届いた。2020年7月1日開業。場所が秋葉原と聞いて、なるほどピッタリの立地では、と思った。そのなかに「第3弾は京都」ともあった(2022年予定)。
東京にいるうちは泊まる機会はなさそうだが、出張先や旅行先にこういう類の施設があれば「使うかも」とは思う。料金はビジネスホテル寄りで、雰囲気はシティホテルとまではいかないがビジネスホテルよりは広くて居心地が良さそうだから。