時代の象徴
高額物件ほど顧客はスペックの充実を求めがち。なかでも広さは要だ。例えば1億円超なら最低でも100㎡に満たなければ物足りないと感じるだろう。だが、現実にはそれ以下の面積の物件が少なくない。「なぜもっと大きな部屋に?」とデベロッパーに尋ねると、計画の段階ではここまで景気が良くなると思わなかったからだという。マンションの商品企画は時代を現すのである。
「パークマンション六本木」は設計の段階ですでに、地価上昇の兆しが見られた。分譲開始はミニバブル絶頂期(2007年)である。販売戸数18戸のうち、分譲価格は最低住戸価格でも坪単価700万円台。同1000万円超が半数を超えた。記憶のなかで最も高い物件のひとつである。
プレゼンテーションルームは、上掲の反転タイプを設営。キッチンとベッドルーム2をつなげ、ベッドルーム2にあたる場所はブレックファーストコーナーとして提案。カウンター天板には厚さ40mmもの無垢の天然石をあしらえた。専有部の標準仕上げは、床が天然石もしくはカーペット(一部、収納庫はタイル)。壁と天井は(収納庫以外)塗装である。幅木さえも木製で統一。工業製品を極力排除し、天然の石や木、繊維が持つ自然の風合いに着目した空間づくりを徹底した。ホールや廊下では左官壁を採り入れるなど、じつに贅を尽くした仕上げになっている。
北西方向、檜町公園の借景を楽しめるリビングダイニングルーム側は、間口14.8m。北東側は同18.9m。リビングダイニングの天井はエアコンも隠蔽型。したがって、床同様、真っ平である。面積と開口のゆとりを有したマンションは、都市の財産といえる。
都心の広大な緑を生活空間に
梁、ダウンライト、カーテンボックス。下り天井には、じつに様々な事由がある。なかでも景色の良さを実感する開口部は要注意。ここでは、鉄筋コンクリート造を疑うほどにそれらを排除した。天井高2.4mは一般的だが、階高を十分確保したことで快適な空間に仕上がっている。
港区六本木。日比谷線「六本木」駅から徒歩5分。「東京ミッドタウン」に道路1本を隔てて隣接。建物の前面は日本庭園を有する「檜町公園」である。天然石の外壁には隅に切り込みが施され、トラディショナルな印象を与える。総戸数24戸。分譲は三井不動産レジデンシャル。設計はアーキサイトメビウス、施工は鹿島建設。2009年竣工。