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「新築VS中古」の客観的整理

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「買うべきは新築マンションか、中古マンションか?」これが、常に問われる永遠のテーマのような扱い方をされているようにも思えるが、新築には新築の良さがあり、中古には中古の良さがある。絶対的な答えなどあるはずもない。一言で言ってしまえば、個人の価値観の違いに過ぎない、ただそれだけのことだ。

では、価値観(による判断)を取り除いたうえで、新築と中古の違いを客観的に整理し、留意すべき点はどこにあるのか。それを示すのが本記事のねらいである。

並行検討率が上昇した理由

下のグラフは、首都圏の新築マンション購入者アンケートでの「新築マンションと中古マンションの並行検討者率」(水色の折れ線グラフ)と「新築マンションのみ検討率」(オレンジの折れ線グラフ)の推移をあらわしたもの<リクルート住まいカンパニー調べ>。

15年ほどで並行検討者は15%ほど増加し、新築のみは逆に10%弱減少しているのがわかる。「新築信仰」の価値観が減退してきた、若い人は古着(中古)にも抵抗なく、ヤフオクやメルカリといった流通システムも簡素化した、そういった「時代の変化」が住まい選びの場面にも影響しはじめている、といった解釈は確かにおさまりがいいが、果たしてそれだけか。

下のグラフは、首都圏新築マンション供給戸数の推移。現状、売り出される数は大量供給時代の半分にも満たない。リーマンショックにかけ、落ち込んだグラフの時期と上掲の並行検討者比率が上昇するタイミングはリンク(2006-2009)している。

新築の選択肢が明らかに減ったから。その影響が出ている、という認識は必要だろう。

首都圏における新築マンション年間供給戸数
首都圏における新築マンション年間供給戸数

決断理由は選択肢の有無や予算

次に、それぞれを選んだ理由を見てみる<国土交通省住宅局調べ>。上から二番目「新築だから」という、わかりやすい価値観に則って行動し決断した人が56.4%もいることに驚く。これは逆に新築相場にかかるバイアスとも受け取れそうだ。

下から4番目「昔から住んでいる地域だったから」は上記供給戸数の減少が中古を選択肢に入れざるを得ない結果のひとつとしてあらわれている。同調査では「住みたい地域に新築がなかったから」(16%)といった結果もある。

注目すべきは、上から三番目「価格が適切だったから」と5番目「デザイン・広さ・設備等が良かったから」。

中古を選ぶ人は「価格優先」が明確。別の結果で「広さが十分だから」中古にしたという結果もあることから、中古マンション購入者は価格と広さのバランスで決断する人が新築より多いといえそうだ。

一方、新築はデザインや設備で選んだという人が多い。設備については「中古では老朽化が懸念」「リフォームにコストがかかる」といった見方がある一方でデザインは新しいほうが洗練されているとみているようだ。資産価値重視の高まりから、作り手も売却時に有利になるよう「外観デザインとエントランス」には昨今力を入れている。室内の出っ張り等も以前に比べると随分少なくなった。

下から三番目「信頼できる住宅メーカーだったから」も見逃せないポイントだ。マンション市場は大手寡占化が進んでいる。ひと頃500社あったといわれるマンションデベも、現在はその三分の一程度まで減少したようだ。これは中古物件を選ぶ上でも重要な項目になり得るという点に留意しておきたい。

とても重要な2つの視点

下の表はお金や保証に関する違いをまとめたもの。税金の違い等はどのメディアにも出てくるが、こと2019年に限っては、消費増税に伴う軽減措置が手厚いことだ。新築市場が一部活性化するのでは、と思えるほど「住宅取得等資金贈与の非課税枠拡充」がインパクトが大きい。

最後に、「新築か中古か」におけるテーマで重要な視点を2つ挙げたい。

ひとつは、自分に合った良い中古マンションを選ぼうとするなら、仲介会社の営業マンとのパートナーシップが欠かせないこと。新築マンションはほぼすべての棟情報がネットで手に入り、モデルルームに行けば物件のどんな細かな問いにも基本すべてその場で回答してもらえるのに対し、中古はそれらすべてが仲介を介してのやり取りになる。認識すべきは「仲介は完全成功報酬型のビジネスモデル」という点。わかりやすくいってしまえば、本当に買うのかわからない人に時間を費やすことが難しいということ。

新築の販売現場では、顧客と営業マンというわかりやすい構図が出来上がっているといえるが、中古でもその認識でいると「思い通りの進捗でない」といった不満不安が芽生えるかもしれない。しかし、パートナーシップを築き、互いの利害を共通認識として深耕すれば、思わぬチャンス(機会)を提供してくれるかもしれない。

ふたつには、新築か中古かという区分ではなく、「いつ、誰が建てたマンションか」といった見方が不可欠であること。

旧耐震と新耐震の境界となる「建築基準法の改正」(1981年)は有名として、「品確法」(2000年)や管理組合設立を義務化した「区分所有法の改正」(1984年)など、建築全般・マンション・管理に関わる転換点(法改正や通達)を知っておくと物件選びに役立つ。そしてこれらの知見は、日毎浸透を見、やがてマーケットに影響を及ぼすだろう。


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