扉の役割
まずは上の間取りをご覧ください。「普通ならあるはずのものがない!」そう気付かれた方はどれくらいいるだろう。この家は玄関とリビングを隔てる「扉」を設けていない。
物件は、閑静な邸宅街に立つ高級マンションである。よって、セキュリティやプライバシーには万全の配慮が施されている。具体的に「屋外」から「自室(寝室)」までをイメージしてみよう。まず、エントランスはオートロック完備に、なおかつ警備員(またはコンシェルジュ)の監視付き。建物内は内廊下設計で外部から守られている。住戸内もご覧のとおり、PP(プライベート・パブリック)分離が明確。これほど幾重にも公私の切り替えが設けられているなら、果たして住戸内の玄関とパブリック空間を閉ざす必然性はどれくらいあるだろう。
(略)
プライベート空間は大容量の収納と間口の広さがポイント。ゆとりのバランスをとる意味でも、玄関続きのリビングは有効だ。実際に図面で見る以上に落ち着いた住まいだったと記憶している。たとえ一箇所でも固定観念を取り払うことで、こんなにも空間は変わるものかと感じ入った次第である。
資料提供:野村不動産
視線は遮り、気配は繋ぐ。
玄関を入って、正面がリビングダイニング。扉を取り払い、半透明のガラスの衝立を間仕切りがわりに置いている。視界は隠すが、光と気配は共有できる優れたアイデア。互いの空間同士の室温差がネックにならなければ、比較的容易に導入することが可能。
港区南麻布。日比谷線「広尾」駅から徒歩4分。「愛育病院」信号を外苑西通りに向かって下る北条坂途中。西武グループ創設者、堤家の迎賓館「米荘閣」跡地である。南傾斜の大庭園と本格的な洋館の施設であった。総戸数119戸。分譲野村不動産ほか。設計は三菱地所設計、施工は三井住友建設。2004年竣工。
※この記事は下記コンテンツより一部抜粋して転載しています。
住み替え、リフォームの参考にしたいマンションの間取り―「都心に住むby suumo」(リクルートホールディングス)