自然とともに暮らす
「一戸建てからマンションへ住み替える際の注意点は?」と、もし聞かれたら。通風、採光と収納には気を付けて、と答えるだろう。一般的にマンションの開口は中住戸なら2面、角住戸でも3面。四方に風と光の入り口がある一戸建てとの差は歴然だ。収納も階段下や屋根裏が使える場合が多いことに加え、敷地の空いたところに物置を置くことも戸建てなら可能。しかし、マンションの共用廊下やバルコニーをそのような用途に用いることは難しい。
上の図面は「東急ドエルプレステージ瀬田」Aタイプ。50戸に満たない物件ながら、間取りはじつに多彩だ。今回は、それでもオーソドックスなプランを選んだ。まず、吹き抜けに注目。キッチンにトイレ、玄関や廊下にまで光を届け、風の道を作っている。角に位置する住戸ではないが、四面開口を実現した。収納も適材適所に確保されたが、それぞれ容量がしっかり取れている。ウォークインクローゼットは2つの洋室に備わり、キッチンパントリーも付いていて重宝しそう。見るほどに、一戸建てに負けない実用的な住まいを目指したことが伝わってくる。
現地は手付かずの森が残る風致地区内にある。風致地区とは、豊かな自然を維持保全するために用意された地域地区のひとつ。高い建物が建てられない第一種低層住居専用地域と似ているが、まず土地利用が前提にあって、その分類を趣旨とする用途地域に対し、自然を守ることを目的に定めた風致地区は、根本的にその意味合いが違う。貴重な景観をマンション暮らしで満喫してもらいたいという設計者の願いが、間取りの隅々に込められている。
資料提供:東急不動産
ハイグレードな素材で落ち着きのある空間に
高質な資材を用い、ハイグレードな空間に。リビングだけでなく、2つの洋室にも折り上げ天井を施した点が珍しい。重厚な内装はときに窮屈さをもたらすときがあるが、手付かずの自然と住まいが一体化し、五感でその豊かさを楽しめるよう、本物志向のインテリアに仕上がった。
世田谷区瀬田。東急田園都市線・大井町線「二子玉川」駅より徒歩6分。自然豊かな景観の南西傾斜地にたたずむ二棟構成の低層マンションである。総戸数42戸ながら総合設計制度を活用。専有面積は最低でも80㎡台を確保している。分譲は東急不動産。設計は日建ハウジングシステム、施工は戸田建設。1999年竣工。