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「晴海フラッグ」を基準にした相場観、修正が必要?

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先日、不動産経済研究所から発表があった「首都圏 新築マンション 市場動向調査 2021年11月度」によれば、首都圏全体の初月契約率は79.9%でした。好不調の目安が70%ですから、80%近い数値は「絶好調」と訳すことができます。

かねてより注目の巨大プロジェクト「晴海フラッグ」がそれを牽引したのは間違いありませんが、地区別にみると
都区部 80.0%
都下  80.8%
神奈川県 75.5%
埼玉県 81.1%
千葉県 90.2%
と、どこも驚くような数字を出していました。この結果だけを見ると、

「首都圏は、すべてのエリアで活況を呈している!?」
「強気で買いに向かっていいのでは?」

と思われるかもしれませんが、そう単純に理解することはお勧めしません。もう少し冷静に今の相場を捉える必要があると感じています。

どの大型物件も「晴海フラッグ」対策を練っていた!?

11月は、神奈川県や千葉県では、昨年比2.5~3倍ほどもの供給戸数がありました。にもかかわらず上記のような数字を記録できたのはなぜか。不動産経済研究所に、目立った物件名を教えてもらいました。その結果わかったことは、

・100~200戸規模の物件が比較的好成績だった(→数字を牽引)
・それらは販売単価@200~@250万円クラスが割合として多かった
・駅近とは言い難い立地が多かった

といった傾向があったことです。これはつまり、言い換えると

・ランニングコストで規模のメリットを出しやすく、「晴海フラッグに勝る要素」となる
・80m2超の広さを誇る「晴海フラッグ」に対して「相当リーズナブル」に映る
・徒歩20分以上かかる「晴海フラッグ」と比較すれば「交通利便で優位」と思われやすい

晴海フラッグの販売スケジュールは、業界の人なら誰もがわかっていたわけですから、ここぞとばかり中堅デベロッパーが「完売がそれほど容易ではない中規模で駅徒歩10分以上」のプロジェクトを「周到なセールストークを用意」して11月を待ち受けていたんだと推察します。

20年ほど前位になりますが、「東雲」駅最寄りの「Wコンフォートタワーズ」の分譲価格は、従前工場が立ち並んでいた環境でもあり、平均坪単価で@150万円前後と、かなり割安な設定で人気を博し、登録最終日は行列ができたほどでした。どのデベもこのときは「あれが完売しない限り、お客さんがモデルルームに来てくれない」と愚痴をこぼしていたのを覚えています。

首都圏全域から注目を集めるプロジェクトが「都心に近い場所」に出現すると、埼玉であろうが、千葉であろうが、新規分譲マンションの販売センターは閑古鳥が鳴くことになります。ところが、「晴海フラッグ」は駅から遠いことから「関心はあったが、やっぱり他物件を検討することにした」「コロナで予約枠が空かず、他へ流れた」ケースは少なくなかったことは容易に想像がつきます。

坪300万円は、本当に割安なのか?

この状況を見て思うことは、「坪300万円の晴海フラッグは、本当に割安なのか?」「もしそうではないとしたら、晴海フラッグ基準で、他の新築マンションの価格妥当性を推し量るのはおかしくないか?」ということです。

「晴海フラッグ」の魅力はたくさんあると思います。そのなかでも「開放感」「広さ」は突出しています。そこに異論はないでしょう。しかし、東京都から払い下げを受けた土地値からして、また「アベノミクス以後の超低金利、需給バランス、大手寡占化」などから、入札時想定していた計画値を相当オーバーして売っている印象があります。

業界関係者が、当時の都知事に質問した様子がYouTubeに上がっています。このような事実からも、そこまで「割安」ではないだろうとみています。これは動画チャンネル「ファクトストック」でも何回も申し上げてきました。

元都知事のコメントがダメ。それに損得の話ではない。https://t.co/BjnioX6rwp— 坂根康裕 【Fact Stock~不動産を分かりやすく】YouTube動画配信中 (@ienoji) December 18, 2021

不動産の資産価値は「利用価値」と「希少性」

蜜の回避から、マンションのモデルルーム予約枠は総じて減少しました。来場の予約を取ることさえ困難な状況で、それが叶えばSNSなどで「やったー!」と歓喜する人がいます。接客テーブルが満席で、隣の熱心な会話が聞こえてくると「この物件はかなり人気なんだ」と思うのが人の心理です。

たしかに、資産価値は「需要の総和」ですから「予約の取りにくさ」や「前のめりになった検討者の数」は参考になるものです。しかし、それは「異常なコロナ禍で実力より増大して見えていないか?」冷静な判断が求められます。とくにリセールバリューを気にする人は要注意です。「物件の本当の実力」はどうか?本来、不動産の資産価値は「利用価値」と「希少性」で決まるものです。

供給戸数が少ないことによる「検討機会の少なさ」、SNSなどによる「煽りか否か、の口コミの判断」、中古物件の減少による「一時的かもしれない高止まり相場を基準とした見方には要注意」です。

【晴海フラッグ】販売結果リリースを解説します。最高倍率(111倍)住戸はどの住戸か!?


【note 売上本数 BEST 5】
1.これから要注意の間取りは「70m2・3LDK・中住戸」
2.「不動産が持つ3つの特質」さえ理解しておけば、後々役立つかもしれません
3.マイホームで【大損する人】6つの傾向
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5.マンションの価値とそれを定める4つの座標軸


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「都心に住むby suumo」(リクルートホールディングス)
連載『間取りに恋して』(2012年3月~2018年8月)再編集
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