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マンション所有者が回避したい最悪のシナリオ

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海外機関投資家の着眼点

 十年ほど前の話。海外の機関投資家を連れ立ち都心のタワーマンションを巡るバスツアーに同行したことがあった。物件の特徴や分譲時の売れ行き、そして坪単価を解説するガイドの役割である。主催者は野村證券。5カ国6都市十数名の参加者は、トウキョウのマンション市場に対して興味を持っているように思えた。今でも覚えているのは、ランチミーティングでの女性からの質問。「What do you think about The Democratic Party?(あなたは民主党をどう見ている?)」折しも、その二日前に衆議院選挙があり、政権交代が決まった矢先であった。「コンクリートから人へ」のスローガンは、公共事業の縮小を前面に打ち出すものだ。

 当時、日本の政治は1年毎に総理大臣が変わるありさま。小泉純一郎氏(~2006.9.26)在職日数1980日の後、①安倍晋三氏:同366日(~2007.9.26)②福田康夫氏:同365日(~2008.9.24)③麻生太郎氏:同358日(~2009.9.16)そして2009年8月30日、自民党が民主党に敗れた。

 しかし、その後も事態は変わらず。④鳩山由紀夫氏:同266日(~2010.6.8)⑤菅直人氏:同452日(~2011.9.2)⑥野田佳彦氏:同482日(~2012.12.26)。各人就任時の日経平均(終値)を記しておくと①15,557円 ②16,435円 ③12,115円 ④10,270円 ⑤9,537円 ⑥8,950円。結果として、民主党政権はマーケットの萎縮を加速させた格好となった。そして、第二次安倍政権が発足。現在、約7年が経過。2019年11月20日に通算在職日数(2,887日)が歴代最長となる。その日の日経平均終値は23,148円。あのときの女性投資家の問いは、じつに的を射ていた。成長を目指し、安定した政権を築くことができるリーダー(首相)がいる国にしか、投資マネーは関心を示さない。現時点で東京圏の不動産は、海外の投資家からかつてないほど人気を集めている。

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リーダーに望む、唯一の条件

 政局でいえば、東京都でも似たような現象が起きた。4期目途中まで知事を務めた石原慎太郎氏は在職期間4,940日。だが長期政権の後は、猪瀬氏:372日、舛添氏:861日、小池氏(現職):1210日超と、1期4年を務めた知事がまだ出ていない。

 東京都の都市力を高めるインフラの整備や環境改善は、石原都知事時代の功績が土台になっている。山手トンネルの開通や排ガス規制は有名で、その他にも新会計制度の導入などは高く評価されるべき施策であろう。30年度東京都財務諸表で正味財産(企業決算でいう純資産)は27兆8,779億円にものぼる。都民一人当たり201万円の計算だ。抜本的な改革・推進は、絶大な支持の元、遺憾なく発揮されたと言っていい。最も象徴的なのは五輪招致だが、「空気をきれいにして、走れる街であることを世界にアピールする」は東京マラソンから一貫したスタンス。もとより時間のかかる交通インフラのような難易度の高い計画の実現は、何より圧倒するほどの人気が前提となる。次の選挙はどうなるかとハラハラどきどきしているようでは、「大胆な予算の付け方はできない」(関係者)ということらしい。

 逆に、支持獲得のための無理なパフォーマンスは、有権者の望まざる方向に事態を向かわせることもある。豊洲新市場への移転延期は、環状二号線開通を遅らせ、2020大会では暫定経路を使わざるを得ない結果をもたらした。国際空港から都心への交通アクセス向上は、東京の都市力を上げるための悲願であったことは承知のはず。「圧倒するほどの支持を得ること」。やはりリーダーに望む条件はこれに尽きる。

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不動産市場が恐れる最大のリスク

 「東京五輪2020の後、マンション相場は下落するのではないか」。これは、かれこれ3,4年前からささやかれている憶測であるが、今の段階でその予兆があるかといえば「見当たらない」としか言いようがない。宴の後はムードが下がるだろうから、全く影響がないとも言い切れないのではあるが、至って局地的、限定的だとみている。

 生産緑地法を根拠とする2022年問題も同様にリスクとみられているが、こちらも地域はもっと(明確に)限られている。詳しくは「生産緑地『2022年問題』が住宅市場に与える影響度」を参照のこと。ここで掲載した棒グラフは要注目。

 マンション相場の上昇は、厳密には一様に値上がりしているのではない。好条件の物件群が数値を牽引しているのだ。このことは、データの見方「中古マンション相場」編でも解説した。何より大事なことは「上昇基調を形成している根源(=希少性の高い物件)」の所有者は、潤沢に資産を有する投資家の割合が高いということ。取引事例比較法で主たる査定がなされる不動産において、相場形成の基盤となす「地域一番物件の下落」は何より恐ろしい。投資家が長期保有を断念することは潮目の変わりを意味すると思ったほうがいい。

 繰り返しになるが、彼らが最も嫌う局面は「不安定な政権」に他ならない。2021年9月、安倍総理任期満了後の次期リーダーは誰になるのか。シナリオ次第で彼らの気分は大きく変わるかもしれない。五輪でも生産緑地でもない、最大のリスクはポスト安倍政権の主導者が握っているのである。オリパラが終了した後、Xデーは残り一年を切る。

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