マンション購入「新築と中古の決定的な違い」
新築マンションの高止まり相場が続くなか、「中古マンションも並行して検討しよう」という人が増えました。ところが同じ分譲マンションであるにもかかわらず「なぜこうも違うの?」と戸惑う人も多いようです。
わかりやすい例として、物件説明の場面を取り上げてみましょう。新築なら、モデルルームで物件にまつわる詳細な解説を「手取り足取り営業マンから」受けることができます。一方、中古を扱う仲介営業マンは「こちらから質問しなければ」原則チラシ以外の情報提供はありません。この違いはなぜ起こるのか?
新築の営業マンは、「この物件を買ってくれるかどうか」に関心があるのに対して、仲介(中古)の営業マンは「この人は本当に買う気があるのかどうか」端的に言えば『すぐに買いたいか?』に関心が向いているからです。仲介手数料は成功報酬のため、業績を保つには常に「いま欲しい人」にコミットしなければなりません。
優れた物件を手に入れたいとき、「新築なら購入をエントリー(登録)することが可能」ですが、「中古の良い物件は市場に出てくる前に消滅(他の人に買われてしまう)する」ケースも珍しくないです。
公開非公開を問わず、良い中古マンションの情報を入手するにはどうしたらよいか?企業であるが故、目先の利益を追求せざるを得ない中で、優秀な仲介営業マンをパートナーに付けるにはどうしたらよいのでしょうか?
この記事は、ある程度物件の目利きがついてきたところで、中古はどうやって探せばいいの?コツはあるの?といった内容に興味がある人に向けてまとめました。
令和の不動産市況はどうなる?
高度経済成長期の土地神話からバブル絶頂までの昭和、バブル崩壊からの長期デフレとアベノミクスの平成、そして令和。コロナ禍は未だその影響が見通せないが、いくつかのシナリオを描くことは可能です。
コロナで市場は「二極化が加速」する
新型コロナウイルスの影響で不動産市場は今後どうなるのか?東京五輪が延期になり、翌年開催も仮に中止になった場合、東京も地価下落に見舞われるのではないか?最近は、こうした疑問や懸念が需要サイドに渦巻いているようです。
リモートワークの推進が、長期的には都心のマンション市場に影響を及ぼすのでは?といった見方も同様です。ワクチンの開発に成功し、供与が始まったとしても「完全に働き方が元に戻るとは思えない」からでしょう。しかし、都市からの人口流出が大量に継続的に進行しない限り、相場の反転(下落)には至らないと考えます。
では、コロナでマーケットはどう変化するのか?一言で言えば「二極化の加速」が起こると見ています。
良い物件はまだ上がるかもしれない、逆は下落が進むだろう、ということです。予測のカギは「世界的な超低金利政策の長期化」です。実際、ダウや日経平均は4月以降上昇しています。投資家はリスクオンのスタンスをとっているわけで、不動産についても良い案件は常に関心を集める状態が続くと見ています。これはますます「質の高い物件が水面下で買われてしまう」ことも意味しています。
参考記事:「二極化の加速」とは?
「物件探しに疲れた」状態に陥らないために
物件は見れば見る程、目が肥えるといっていいでしょう。スキルも蓄積されます。最初の10~20物件は常に発見があり、物件見学が楽しみにさえなります。訪問のハードルが低い新築マンションなら、快適にもてなされ、モデルルームも見ているだけで気持ちのいいものです。
しかし、数の積み上げは良いことばかりではありません「見過ぎてわからなくなってしまった」「(どれもよく見えて)一つを選べない」「物件探しに疲れてしまった」という人は少なくありません。
「二極化の加速」場面において、「片っ端から見る」という方針は捨てましょう。本当に検討に値するものだけに絞り込み、逆に数少ないチャンスを見逃さないようにすべきです。そのためにも「物件探しのコツ」を理解しておく必要があります。
「資産価値」か「居住価値」か
本格的な物件探しの前に、必要な作業があります。それは、「どんなマンションが欲しいか」条件を整理することです。セオリー通りに行けば、立地・価格(予算)・プラン(広さ等)となります。が、最近は将来的な生活防衛のためにマイホームを考えている人が多いことから、まずは「資産価値」と「居住価値」のどちらを優先するかを明確にすること、をお勧めします。
ご家族で検討する場合、意外と多いのが「夫は資産価値、奥さんは居住価値」といったパターンです。もちろん逆もありますが、ポイントは「軸が揃っていないこと」です。資産性は立地条件に重みがかかるのに対し、居住性はプランとくに広さに重みがあります。これらはトレードオフの関係と言って良く、両者の意見の一致が困難になることが予想されます。
ここでは、最低限の居住性を担保しつつ、できるだけ資産価値の下がりにくいマンションを手に入れたい、という前提で話しを進めたいと思います。
成熟社会で勝ち残る不動産の条件
ここからは、二極化のいわゆる「ピン」側に入る物件の条件を記します。これまでの先入観、固定観念を一旦忘れて読み進めてみてください。
地価の上昇圧力がかかる「人が集まる立地」をねらえ
相場動向や市況を読むには、まず「大局を見る」ことが大事です。資産価値とは、需要の総和。つまり多くの人が「住みたい」と思う立地を選ぶことです。この話をすると二極化現象を捉えて「都市と地方」「都心と郊外」の対を挙げる人がいます。間違ってはいませんが、原理原則で理解するのは「人が集まる立地」をねらえということになります。
日本は人口減少・少子高齢化が進行し、これまでと「同じ範囲」に「同じレベル」のサービスを提供することは難しくなります。そこで行政コストを下げるために「歩いていける範囲内に生活利便施設を集約する」ことを推奨しています。これがコンパクトシティ構想です。ここまでは皆さんご存知のことと思います。
これから家を買おうという人は、さらに深めて「自分の住む都市圏なかで、今後ヒトが集まる立地はどこか」といった観点を持つ必要があるということです。東京都では、拠点の位置付けを2年前に明確にしました。「多様な人を集めることができる街」は限定されていくでしょう。人口が増えている東京都でも「減少局面に入った後のことを想定して」このような施策を打ち出しているのです。
参考サイト:中核的な拠点等の位置付けについて(東京都 都市整備局)
上記リンクの資料を見ると、「私鉄沿線よりもJR沿線が多い」とか「街の個性を発揮するための取り組みが行われている」など、都市政策の方向性を理解できます。マンションの価格は人口流入だけでなく、相続税改正や金利低下によって上昇している側面が強いです。つまり、「政策相場」の色合いが強いわけですから行政の都市整備政策はある程度把握しておく必要があります。
色々面倒だなあ、と思うかもしれませんが、資産価値はマーケットが決めるものです。なので、その要因となるデータや政策を押さえなくては、資産価値が下がりにくい立地を見分けることはできないでしょう。
立地だけでなく「建物性能」「管理の状態」も重要視される
マンションの歴史を見ていくと、「質を見分ける基準の変遷」を知ることができます。代表的なものは「耐震基準」です。建築基準法(1950年)が定められたのも、現在の耐震基準に改正(1981年)されたときも「大地震」が契機になっています。
区分所有法や標準管理規約の改正・改定も、マンションが引き起こすトラブルの深刻化にあわせて更新されています。管理組合の設立(1983年)、マンション管理適正化法(2000年)、最近では認定制度(2020年適正化法改正)などますます「良し悪しが明確化」されるようになるでしょう。
震災、水害といった自然災害の影響に加え、老朽化マンション増加に伴う問題の深刻化は、結果として「建物の性能と管理の状態がいかに重要か」をマーケットに浸透させることになるはずです。これは大きく外れることのない未来予測だと考えます。
格差社会に合わせた「仲介戦略の変化」
超低金利の長期化は、資産の膨張をもたらし、やがてそれは格差社会の進行につながると考えられます。株や不動産といった、「資産を持てる人ほど富む」世の中になるということです。
相続税改正(2013年公布)は都心のタワーマンション人気に拍車をかけました。以前より、超高層マンションの上層部は年に数回しか部屋の灯りが点かない、などといわれたりもしましたが、「とりあえず持っておく」「人に貸す」住戸がさらに増えたということです。
ここで、ある仲介営業マンを想像してみます。
彼の手元には、たったいま「Aマンションで新たに売りに出たばかりの(取引事例からして決して割高ではない売却希望価格の)住戸情報」が入ってきたとします。
Aマンション買い待ち客のリストには、2名の名前が載っています。一生に一度の高い買い物で慎重を期して検討するマイホーム購入検討者(Bさん)と、すでに同じ棟を複数戸所有しているオーナー(富裕層のCさん)。Cさん所有のなかには、自分が扱った住戸もあります。Cさんからは「また良いのが出たら真っ先に教えて」と言われています。彼は、BさんとCさんのどちらに情報を流したほうが、早く業績を上げることができると考えるでしょうか。答えは述べるまでもないと思います。
読む人によっては、やや気分を害するような想定をあえてしたのは、現実をはっきり知る必要があると思うからです。初めての契約を前提にした場合、それくらい資産価値の下がりにくい中古マンション購入は難易度の高いトレード(取引)だと理解しておくべきでしょう。
良い中古マンションを手に入れるためのアプローチ
良い中古物件を購入する難易度はとても高いですが、決して不可能ではありません。ここからは、具体的にそのアプローチの方法について伝授しましょう。
予め「候補となるマンション」を決めておく
では、物件探しのコツを手順を追って解説していきます。前ページで述べたように「資産価値の下がりにくいマンション」は狙っている人が多いです。また、仲介の営業マンは、効率的に取引を成立させることを理想としています。
したがって、まずは「このマンションは良質であることを自分は理解している」「棟の検討はする必要がない(問題ない)」ことをアピールすることが大事です。
これから人が集まるエリアはどこか。活性化が止まない街はどこか。そのなかでランドマークとなる、エリアナンバーワンとなるマンションをピックアップすること。買いたい、住みたい物件を先に決めてしまうということです。
実績の多い仲介営業マンに自分からアプローチする
次に、そのマンションの扱いが多い(=掲載物件数が多い)仲介店舗を探します。ポータルサイトや仲介会社のサイトを見に行って、情報量が多い店舗(大手でもだいたいが物件に近い店舗になるでしょう)を知り、できれば誰(営業マン)レベルまで知っておきましょう。
実績の多い店舗、営業マンがわかれば、購入意欲があることを伝えます。実績が多いほど、待ち客リストを多く抱えていると考えられます。初めての問い合わせには「一見(いちげん)さん」対応されるかもしれません。
相手の応対が気に入らなくても「自分は顧客だ」などという態度をしてはダメです。良い中古物件の情報入手のためにはパートナーが不可欠です。パートナーシップを築くためには、まず自分が何者なのか、なぜこのマンションが欲しいかときちんとプレゼンテーションしなければなりません。話はそれからです。
情報収集をこまめに取ること
自己紹介が終わったら、「相場観」「希望住戸」をすり合わせる段階に入ります。すり合わせるといっても、実際は「マーケットの現状」を教えてもらう、です。ここ数年の成約価格の変化、人気の住戸タイプ、ライバル(他に欲しいと言っている人はどんな人たちか)等。
話を聞き、自分の意見を述べる中で、お互いの共通認識として「単価の目安」「希望のタイプ(広さ、階数、向き)」が明確になっていきます。その後、数か月間で、自分宛に未公開情報を教えてくれるかどうかで信頼構築の成否がはっきりするでしょう。
共通認識としての「単価」「プラン」に合った情報が提供されたにもかかわらず、決断に時間がかかったり、納得のいくNGの説明ができない場合、たぶんその後その営業マンから情報を得ることは難しいと考えたほうが良いです。
情報提供は本来営業マンがするものですが、この場合、自分からも定期的に連絡を取り合ったほうが良いでしょう。都度マーケットの動きを教えてもらうことはそれだけでも参考になるものです。
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