新型コロナウイルスが不動産市場に与える影響は「地価の下落」でも「マンションン相場の暴落」でもなく、「二極化の加速」だと考えています。今月登壇したオンラインセミナーではそのように解説したのですが、ここであらためて具体的に述べておきたいと思います。
二極化の加速とは、良いものはさらに価値が上がり、そうでないものは下がる、ことです。二極化自体は、ここ数年続いてきた傾向ですが、コロナでそれが促進されるとみています。
では、良いもの(不動産)とはどういう条件をいうのか?
聴講されている方は、当然のことながら、そこに関心が向かいます。そして多くの方が「やはり立地は都心部ですか?」といった質問が出がちです。わかりやすくイメージをしてもらうために、具体的なデータをもって説明したいと思います。
下のグラフは、港区の2地点の路線価の変化をあらわしたグラフです。オレンジが「虎ノ門ヒルズ」の「車寄せ」に面した道路側、グレーがそこから400m程(徒歩約5分)離れた「日比谷通り沿い」。
御存知「虎ノ門ヒルズ」は複合再開発のみならず、将来はシャンゼリゼ通りのような巨大な幅員と路上空間を活用したメインストリートを目指す「新虎通り」が正面を走り、さらには新駅「虎ノ門ヒルズ」、周辺の再開発ビル群と、都市再生の国家プロジェクトが集約したような立地。
2008年を100とした場合、約3倍も路線価が跳ね上がったことに驚きの声があるかもしれませんが、十分納得のいく理由があることにも容易に気付くはず。
一方、その「虎ノ門ヒルズ」から数百メートルしか離れていない場所の路線価が2008年の水準に戻っていません。おそらく、こちらの現実のほうが驚かれることと思います。
アベノミクスを経て、都心の地価上昇が叫ばれ、なかでも最注目される「港区」立地。にもかかわらず、この事実は「利用価値の向上が見込めない土地に対する評価」の厳しさをあらわしているとしか言いようがありません。
「山手線の内側なら」とか、「港区なら」とか、これまでのよう大きなくくりではもはや判断できないということです。ピンポイントの立地、交通インフラの状態、高度利用や防災面の整備、将来性。オレンジの上昇角度が下がっていないということは、都市の成長を一身に背負ったロケーションのひとつであることを意味しています。