前回の記事では「マンションから一戸建てに住む替え」を検討している人向けに留意点をまとめました。その中で「一戸建て」を検討するときの「土地の見極め」はマンション購入時には必ずしも必要ではない視点・項目があることに言及しました。
この記事では、土地情報の見方をまとめます。その過程で、不動産を見る目が自然と養われるポイントを述べていきます。そこでは、例えば「碁盤の目状の街区は相場が高くなる理由」や「物件情報を見るだけで不動産会社の信頼性も読み取れる」こと等がお分かりいただけるのではないかと考えます。
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マンションの物件情報を見る順番
まず、マンションの見方を簡単にまとめます。チラシでもポータルサイトでもメディアは異なっても視点の先は同じです。購入検討する場合と相場を調べる場合とに分けて解説します。この類に正解はないので、あくまで私の場合と仮定してご覧ください。
購入検討する場合
自己所有目的で閲覧する場合は、検討エリアにある売出物件情報の一覧を、まず価格でソーターをかけます。次に、物件情報が相場に対して割安か割高かを見ていきます。相場がわからない場合は、単純に単価が安い(または高い)順番に並べるだけでも構いません。
割安な(または割高な)ものには理由があります。
マンションは比較検討しやすく、相場から乖離している理由を容易に見つけることができるはずです。要因の多い順に「立地」「築年数」「階数」「向き」「間取り(住みやすさ)」「売主・施工会社」「管理費・修繕積立金」などが挙げられます。それぞれ簡単に説明すると。
立地:最寄駅からの距離、嫌悪施設の有無、隣接地の状態
築年数:旧耐震かどうか(1981年が目安)
階数:地下住戸や1階住戸は安く、最上階は高い傾向にあります
向き:方角と眺望(人気のランドマークが見える等)
間取り:無駄なスペースがない、ルーフバルコニーが点いている等
売主・施工会社:信頼性を見る
管理費・修繕積立金:妥当な水準かどうか
資産運用「賃貸中」の物件いわゆる「オーナーチェンジ」は、相場より割安に売り出される場合が多いです。すぐに住みたい場合はNGですが、条件として問題なければ検討の余地はあると思います。もちろん、賃貸条件等確認項目は増えますのでご注意ください。
相場を知りたい場合
エリア相場を調べることが目的であれば、価格でソーターをかける必要はありません。それよりも築年数で並べ、坪単価の値(ゾーン)を確認する方が良いでしょう。
上記同様、階数や向きなど条件と価格の整合性を確認して特殊なものをはじいていけば相場が把握できます。ただし、あくまで売却希望価格なので、実勢価格はそこからからマイナス15%の範囲で認識しておくと良いのではないでしょうか。
ここ数年のマンション市場では、「駅近」×「大規模」×「超高層」の3条件にあてはまる物件の中には、周辺相場にプラスアルファのプレミアム分が付加される傾向もありますので注意してください。
土地の物件情報を見る順番
では、土地情報を見る順番について述べていきます。土地の場合は、坪単価で見分けがつきにくく、視点がマンションに比べると多くなります。順番も異なります。
「道路付け」を見分ける
土地の価値は道次第、と前回の記事でも述べましたが、接道の状態で価格は大きく異なってきます。坪単価で「これは安い!」という物件があれば、たいていは
・前面道路が公道ではなく私道
・前面道路の幅員が狭い(≒容積率に制限がかかる※)
・接道の間口が狭い
などの理由にあてはまるといっても過言ではありません。それでも良いという方もいるでしょう。もちろん好み次第ではありますが、市場価値をよく考えてから判断してください。
※都市計画法上の容積率に対して「前面道路の幅員×0.4」が下回る場合は、その値までしか容積率を活用することができません。道路は土地の利用価値を制限する可能性もあるのだと認識しておいてください。ちなみに「土地と道路の関係」の原理原則は、再開発立地の評価が飛躍することにも相通じています。
「地形」を見分ける
次に、家が建てにくそうな地形を避けていきます。旗竿地が典型ですが、四角な整形ではない土地は、建築の制約を受けがちです。土地の大きさと形から「玄関」「リビングダイニング」「水回り」「居室」「車庫」などの配置が自然と思う浮かぶ土地が理想です。
道路と地形に難がある場合、売出価格はそれ以外のものに比べると割安感があるはずです。同じ条件で分類し、価格相場を感覚的につかむことが大事です。
碁盤の目状の街並みは高評価な理由
土地情報を繰り返して見ていれば、エリアごとの相場の差が理解できると思います。わかりやすいのが、碁盤の目状の街並みです。
住宅街として区画が整った碁盤の目状の街は、道路の幅員や接道の間口、ひと区画あたりの面積などが最適になるよう設計されています。
建物が建てやすいのはもちろんのこと、その間取りも理想的なプランが入るよう考えられています。1階にはリビングダインングと水回りが。居室は2階にすべての寝室が南向きになるように。庭や車庫の位置も悩まずに済むでしょう。
その街に属すほとんどの家が、庭に面したリビングダイングが真南向きで無理なく車庫が配置できるとしたら。それが困難な街に比べ、相場が高いのは当然と思うはずです。
道路付けや土地の形から受ける制約を理解できれば、大規模マンションがなぜ人気が高いのかもわかります。理想的な間口、奥行き、向きの配置がしやすいため、他と比べてマイナス要素が少ないからです。
物件情報の出し方で信頼度を図る
さまざまな土地情報を見ていると、不動産会社によって情報提供の仕方に違いがあるのがわかります。例えば、縦横サイズのデフォルメです。数値上はどう見ても長方形になるはずなのに整形に近い、長さの値がそもそも書き込まれていない等は要注意です。
同じ不動産会社でも、マンションデベロッパーのような開発系の企業もあれば、仲介を専門とする企業もあります。開発業者は、用地情報を仲介業者から提供されたりするわけですが、「資料が正確かどうか」で信頼性を図ります。
一般消費者は、それと同じように判断する力を付けることは難しいわけですが、「事実として物件情報を開示しているか」という視点は常に持ち合わせていたいものです。
参考サイト
不動産の表示に関する公正競争規約施行規則