マイホームを購入する場合、物件選びは最も難しく、悩ましいフェーズである。家族の中でも意見が分かれたり、他人にアドバイスを求めても決断に踏み切れなかったり。見れば見る程、どれが合うのかわからなくなることも多い。ここでは物件選びの大前提となる「資産性」と「居住性」の違いを整理する。「マイホームに何を求めるか」を明確にすることで、物件の選別はよりスムーズになるだろう。
資産価値を決めるのは「市場」
資産性と居住性。それぞれをいろんな項目で見ていくと。
まず、資産価値の評価の主体は、マーケット・市場である。つまり、自己ではなく、他者が評価するものだ。自分がいくら資産価値が高いといっても市場で認めてもらわなければ意味がない。評価指標は、換金性を示す「リセールバリュー:売却価額-購入価額(及び経費等)」や収益性をあらわす「利回り:(表面)年間賃貸収入÷購入価額」で計る。購入に適した時期、つまり「買いどき」は市場動向を参考にしながら、あるいは資産運用意欲が高まったとき、となろうか。
購入条件の基準は、運用益の大小、リスクの大小、予算。購入プロセスは、オーナーチェンジの場合等は物件を見ずに決断するケースも有る。周辺利便施設も物件の想定顧客(借り手、買い手)が必要とする施設の充実が求められる。検討エリアは、範囲を限定しない場合もある。今住んでいる地域や通勤はまったく関係が無い。
広さは、あまり面積が大きすぎるとグロス(総額)がかさみ、市場規模が狭まる恐れも。設備は想定顧客が求め(かつコストの低い投資で)必要最低限に抑えることが投資効率を高めるコツとなる。交換や修理のコストも手間を抑制したい。
居住価値は「自分(や家族)」が決める
一方、居住性はどうか。同じように見ていくと。
まず、評価の主体は住み手(オーナー)以外の何物でもない。他人に何と言われようと「自分が居心地が良い」と思えばそれで良いのだ。自己評価がすべて。評価指標は、希望条件に合った住み心地が得られるかどうか。購入時期は、ライフサイクルの節目、住み替え意欲が高まったときが「買いどき」となる。
購入条件の基準は、自分のしたい暮らしを満たせるか。予算も無理をしないこと。購入プロセスは、現場視察やモデルルーム見学等を繰り返し、候補物件を絞り込んでいく。周辺利便施設は、自分の暮らしに合った施設が欲しい。検討エリアは、居住地や勤務地等をベースに候補を限定していく。
広さは、将来を見据えてある程度「ゆとりがあったほうがいい」と考えるのが妥当。設備も自分の暮らし方に合った装備を求める。
資産性を居住性は真逆の関係
このように見ていくと、資産性を居住性は視点がまったく異なることに気付くだろう。真逆の関係といってもいい。最悪なのは、両方を得ようとしながら結局どちらも満たせない中途半端な物件を買ってしまうことだ。
人生100年時代。定年後も暮らしを安定させるために、資産価値の高い不動産を買って住みたいというムードが高まっている。だが、冷静に考えれば「十年後でさえ、資産価値がどうなっているかは誰にも分らない」。本質は、年金暮らしになったときに「コストが低く、住みやすい家であること」。立地は通勤軸が消える。それ以上に、建物の断熱性や動線、バリアフリーが重要キーワードに上がる。