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不動産広告「徒歩1分80メートル」自転車は?

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 折り込みチラシで不動産広告を目にする機会が増えました。「月々の返済額と今の家賃をくらべてください!」「駅至近」「東京タワーが見えます」など、さまざまなキャッチコピーが目に飛び込んでくる。物件の特徴をできるだけ分かりやすく伝えるために紙面の構成がなされているようだ。

 チラシに限らず、新聞、情報誌、インタ―ネットなど、およそ不動産広告のジャンルに入るものには、そのすべてに「物件概要」と書かれた欄が設けられている。「交通アクセス」、「面積」、「容積率や建ぺい率」、マンションであれば「管理費」「修繕積立金」などがそこには表記されているはず。これらの項目は広告を見た人たちへ正確に物件情報が伝わるよう、一定のルールに基づき表示しなければならない決まりになってる。不動産広告には「不動産の表示に関する公正競争規約」(業界の自主規制)で禁止されている表現もある。「最高」や「日本一」、「抜群」「格安」など合理的な根拠の示しにくい、誤認を与えるような言い回しは不可。広告を開始するタイミングにも制限がある。分譲住宅であれば、建物の建築確認の許可が下りていなければ告知してはならないと宅地建物取引業法で定められている。

 「用途地域」や「接道条件」など専門知識を身に付けたうえでなければ判断できない項目もある。こればかりは、学ぶほか判断基準を得ることはできないわけだが、意外と知っているようで正確に知りえていないこともある。例えば「駅からの所要時間」など。資産性にも大きく関係してくるといわれている「最寄駅からの距離」は最も重視したい項目のひとつ。できれば5分以内、最低でも10分以内と決めている人も多いのではないか。メートル表示ではわかりにくいため、たいていは「徒歩分数」(もしくはバスとの併記)で記されている。

 この「徒歩の所要時間」は実際に歩いて測っているのではなく、「80mを1分」として算出している。基準を設定することで、歩くスピードが速い人や遅い人との誤差を最小限にとどめ、物件を比較検討しやすいようにしているのである。

 したがって(あるいは、ここは「一方で」と接続した方が適切なのかもしれないが)、例えば信号の待ち時間や坂道の登り降りなどは一切考慮されていない。その点はよく理解しておいたほうがよいだろう。とくに、最近はインターネットで条件検索することも多いため、徒歩分数の条件をシビアに制限しても実際はその通りにはならない場合があることも想定したほうがよいから。地形や交通事情などは所要時間に加味されていないことを十分認識しておくべきだ。また、徒歩分数の距離を測る地点も要注意。改札口から、ではなく、現地にいちばん近い駅構内から計測する。(売主によっては「〇番出口から」と記載しているケースもある)したがって、地下通路の長い駅などであれば、その分上乗せしなければならないだろう。さらに、現地もエントランスからではなく、駅にいちばん近い敷地までを測る。現地には着いたものの、エントランスまで結構な距離のある大型マンションなどではさらにプラスしなければならない。

 駅までの所要時間ということでいえば、タワーマンションのエレベーターの待ち時間なども、広告表記における分数と実際との差がある例としてよく挙げられる。せっかく駅前のマンションを買ったのに、朝のエレベーターのラッシュで5分もかかるじゃないかという失敗談のような話。本来ならば、エレベーターの台数もある一定規模以上の建物に関しては表示してもらえるとよいのかもしれない。都市の高層化・大型化に広告規約が追い付いていないのか、それくらいは消費者が自ら事前に予防線を張っておくべきなのか。何とも判断し難い境界線のようにも思う。

 時流ということでいえば、都心回帰もひとつの傾向だ。同じく広告表記の観点で見れば、徒歩分数だけでなく、自転車での所要時間が目につくようになったのもその影響と捉えることができる。電動アシスト自転車の普及や自転車通勤の増加など話題に事欠かない昨今のテーマだが、じつはこの自転車での所要時間と距離の関係は明確な定めはない。現状は各社によって異なるようだが、およそ1分あたり200mから250m程度で換算されている模様。この点も実態にルールが追いついていない例かもしれない。

【関連サイト】
社団法人首都圏不動産公正取引協議会


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