リビングは巨大なサンルーム
不動産売買は相対取引である。ひと時に複数戸数を売り出す分譲マンションも原則は同じだ。在庫を回避したい売り手は、なるべく多くの人から気に入ってもらえるよう住まいづくりを余儀なくされるのだろう。しかし、一方で個性的な空間を求める買い手も少なくないのでは。そもそも暮らし方は十人十色である。
上図は松濤・神山町エリアのメゾネット。注文住宅を思わせる個性的な間取りである。一番の特徴は部屋全体がサンルームになったリビングダイニングであろう(室内イラスト参照)。ルーフバルコニーにかかる空間の天井部分が一面ガラスで覆われている。
(略)
居室や収納にも参考になるところが多い。マスターベッドルームとその他のベッドルームとの広さの差。水まわりスペースの十分なゆとり。収納場所の数の多さにも驚く。
不特定多数を意識した標準的なプランも悪くはないが、突出した個性のある間取りにも着目したい。快適な空間づくりは、えてして新たなチャレンジから生まれてくることがある。
「3面+天井」をガラスで覆う未体験のサンルーム
リビングダイニングの北面間口は約8メートル。天井と壁がすべてガラスで覆われている。加えて南と北の壁面も一部ガラス窓で構成。とても屋内とは思えない明るさである。これほど大胆な開口は、南向きや西日の入る空間では、まず実現することは不可能だろう。
渋谷区神山町。半蔵門線「渋谷」駅徒歩12分。「第一種低層住居専用地域」特有の落ち着いた住環境であり、現地はそのなかでも高台に位置している。外壁は淡い色の天然石で覆われ、等間隔に窓が開く。見る者に安定感を思わせるたたずまいだ。地上4階地下1階建て。総戸数26戸。分譲積水ハウス。施工竹中工務店。2008年竣工。
「住み替えやリフォームの参考になるマンションの間取り」(『都心に住む』by SUUMO連載を再編)より抜粋しました。