マンションのモデルルームは、なぜ必要?
分譲マンションの販売センターには、たいていモデルルームが併設されています。造作家具等オプションを採用し、照明から小物まで総合的にインテリアをコーディネートした空間です。生活感が出がちな冷蔵庫や洗濯機などは無いことが多いです。工事中で実物が見れない物件の理解を深める意図があるものの、あくまで検討顧客にプラスの印象を与えることが目的だからです。
幾つかの間取りタイプが存在するのに、「ひと部屋だけ(2,3ある場合もあるが)見ることにどれだけ意味があるの?」結構コストもかかっていそうだし「その分、価格を安くしてくれたらいいのに」などと思う方がいらっしゃるかもしれません。
「果たして、モデルルームは何のために存在するのか?」それなりの数を見て、取材してきた立場から、その意義を私なりにまとめてみたいと思います。そして、かつては一戸建てが最終的な持家の形態だった慣習を変えてみせた「ハイグレードなマンション」の印象的なモデルルーム画像を取材で撮り下ろした5000点超のなかから厳選して12点(竣工済含む)ご紹介します。
誰に何を提供しようとしたか?
モデルルーム設営の一番の目的は、共通の仕様・グレードを確認してもらうこと。次に、工事中の場合は、ここが大きなポイントなのですが、間取りセレクトやオプション選択の参考にしてもらい「カスタマイズを決断するため」にあるのです。
そして、億ションのような「高級物件」は少し意味合いが異なります。もっと端的に言えば、対象マンションの最高額住戸をモデルルームに設定している場合、これは「誰に対して何を提供しようとしているのか」が表現されているはずです。モデルルーム空間に「物件のコンセプト」が体現されているのです。そこには、デベロッパーの力量が凝縮されています。立地の見立て、ターゲットの設定、トレンドの研究、洗練されたセンス、立地の特長を引き上げるアイデア等が詰まっているからです。
上部「パークマンション三田綱町フォレスト」は「オーストラリア大使館」、「三田綱町倶楽部」の緑を借景に。「プラウド南麻布」はフランス大使館の緑の借景が特徴です。鏡やハンモックを用い、ともに「魅力の最大化」を試みていることがわかります。
ハイラインに求めるものは「艶」
さらに、マンションデベロッパーのブランドラインナップの中で、最高位に位置する「ハイライン」ではそれだけはない、プラスアルファのエッセンスが求められます。業界大手で営業力に定評のあるA社の都心エリア営業統括責任者だったB氏は、それを「艶(つや)」と表現しました。
B氏「億ションは高級感があるのは当たり前で、何というか『艶』みたいなものが感じられないとお客様にウケないんですよね」と。うまいこと言うなあ、と思ったのを覚えています。
個人的には、「艶」は主にマスターベッドルームで、それ以外ではリビングやバス・洗面室、ウォークインクローゼット等で見つけることが多いイメージです。三井不動産レジデンシャル「パークマンション」や森ビル「ヒルズレジデンス」はじめ大手ブランドになかから参考になりそうな画像を12点抽出しました。残り10点、次ページ以降でご覧ください。なお、掲載画像は無断転載・複製を固く禁じます。