マンションの資産価値を決める要素は「立地」「建物」「管理」の3つ。最近は、立地であれば駅近が有利。建物はエントランスや外観など共用部で評価が分かれやすい。管理は日増しに注目度が高まっている。しかし、マーケットは生き物。永続的にその価値を見誤らないために、大切なことを3つ挙げておく。
不変的キーワードは「希少性」
資産価値を見極める上で「立地」は最も重要な要素である。前述したように今なら「駅近」が人気だ。が、駅近評価はここ数年の現象に過ぎない。昭和~平成初期にかけては、低層住宅街の高台立地が評価された。当時は駅周辺より閑静な住環境が住みやすいとされ、豪邸の居並ぶ景観は憧れでもあったからだ。
建物も、例えば専有面積は今でこそ「貸しやすい」「売りやすい」50~80m2程度が流動性が高いとされている。しかし、元来「広さ」はマイホームの譲れない条件のひとつでもある。家族4人ならシンプルに(一人一部屋の)4LDKを希望する人も多いだろう。したがって、広い住戸は需要が底堅く(その割には供給が少なく)値崩れしない傾向さえあった(もちろん場所にもよるが)。
つまり、需要が集まりやすい条件のなかで、いかに「希少性」を有しているかが、本質ということ。もし「共働き世帯が激減したり」「不動産より魅力的な利回りの投資商品が開発されたり」「鉄道以外の便利な移動手段が普及したり」すれば、駅近物件は(利便性に変わりはなくとも)市場価値を維持し続けると言い切ることは困難だろう。
市場の「コンテキスト」を読む
次に、マーケットの「コンテキスト(文脈)を読む」重要性を挙げたい。不動産は、よく「経験と勘」が大事という。しかし、ここで言いたいことは、むしろその逆。ポイントは2つある。
ひとつは「行政の指針」である。例えば、東京都は、都庁を丸の内から西新宿に移転した1990年当時、都心機能を「新宿」や「池袋」「多摩ニュータウン」など「副都心」と位置付けた準都心部、郊外に分散される方針であった。これを180度転換したのが2000年前後。「丸の内の再開発群」「六本木ヒルズ」等が次々と誕生し、都心に様々な都市機能を集中し始めたのである。都心に足りない住宅の建設をインセンティブを設けて推進し、「住む場所」に変えた。株式売買には「国策に売りなし」という言葉がある。不動産市場にも、とくに方針と施策が明快な行政には相通じるものがあると言いたい。東京都はその筆頭のような存在ともいえ、「都市づくり」関連のリリースは見落とせない。
もうひとつは、税制である。相続税改正に、マンション市場は多大なる影響を受けた。そもそも金利と税制は不動産マーケットを変えるというが、不動産売買に直接関係しない税制がこれほど影響を与えるのは珍しいのではないか。これも少子高齢化、資産の世代間移動という大きなテーマによるものだが、時代の流れをよく見ていなければ変化に敏感になれない典型的な事象だろう。
要は「誰に買って欲しいか」
最後に「集合住宅ならではの相場変動」について。不動産相場は、取引事例の集積から形成される。マンションは、同じ間取りタイプが上下に並ぶことも多く、より事例に拠る傾向が強いといえるだろう。したがって、一般的に「(同プランの場合)上の階より下の階は高く売れない」。
マンション分譲では、新しいプロジェクトが発表されるたびに「いくらで売るか?」と、その値付けに関心が集まる。売り手のデベロッパーも、分譲販売価格は当然慎重に決めていく。しかし、それは全戸販売する立場からくる動機付けだ。これがもし、半数(それ以下でも良い)は自社で所有するとすれば「いくらで売るか?」の前に、「誰に買って欲しいか?」と考えるのではないだろうか?短期的な市場動向で売却することはせず、できれば「リーマンショック級の不況がきても動じないオーナー」に持っていてもらいたいと考えるだろう。どのような景況であっても極力値崩れしないことを望むからだ。
自分が買ったマンションの資産価値を気にする人であれば、同じような感覚を抱くはずだ。