SNSでマンション用地の高騰が話題になったときのこと。東京五輪まではデベが強気に買うだろう、との情報からスタート。新築マンションの価格に、それが反映されることを危惧する声や仕様がグレードダウンする(正確には下がっているものが、もっと下がる)といった不安につながっていったのだが、そこで「居住性は天井の高さがひとつのポイントになる」というサジェスチョンが、ある専門家(不動産専門の調査機関)から出た。まさにその通り!と思い、流れ的にもっと参加したくなり、天井の高さを見極めるときに備えておきたい情報を発信したくなったわけだが、それは結構長くなるので、このブログでまとめて書くことにした。
海外では「テンフィート(3m超)」が目安
天井の高さは、とくに高級マンションでは決定的な評価要因になる。由来は海外のレジデンスが10フィート(約3m)をハイグレードの目安にしているから。300~400㎡ある専有面積とのバランス、大型家具との相性などを考えるとそれくらいタッパ(高さ)がないと釣り合わない。ところが、日本は畳に座って暮らしてきた歴史もあり、高さ制限が多くの地域でかかることもあり、そんなに必要か?床が取れないと採算が合わない!となるため、現実には2.4mから高くてもぜいぜい2.6mくらいに抑えられる。例外という表現が正しいかどうかはわからないが、千代田区番町は高さ制限がないことで知られている。比較的天井の高いマンションが多いのはそのためだ。タワーマンションも同様で、階高を3m以上取ってスケルトンインフィルにして可変性の高い空間を作りやすい。ペントハウスが好例である。
さて、ここからが本題。ご存知のように、高級物件は折り上げ天井を採用して、空間の(横と縦への)広がりとグレード感を演出する場合が少なくない。折り上げの一番高いところを指して「2.7mあります」とか。これが要注意である。
凸凹が多いと快適性は劣る!?
そもそも、ほとんどのRC造が選択するラーメン構造では、建物の室内は柱や梁が生じやすい。とくに上からくる圧迫感はできるだけ避けたいもの。梁は構造躯体だけでなく、設備のための梁もある。それらの段差に加え、さらにはダウンライトのための下がり天井、「高級物件は必須」的認識が定着してしまった天井埋め込み式カセットエアコンなど、上に付けなければならないものが多く、気づいてみると「ガタガタに段差のある空間になってしまった」場合が少なくない。つまり、もっとも高い(でも、その部分はとてもサイズが小さい)ところが標準以上だからといって、それが快適性と同義ではないということだ。
総合的にインテリアを考慮して判断
段差だらけになるくらいなら、潔く高さは抑えて、そのかわり真っ平な天井にしてしまったほうが上質なときもある。折り上げ天井に関しても一言。折り上げこそ、相当ゆとりのある空間でないと難しい。そもそも家具の位置を制限してしまう可能性の高い装飾で、20畳程度しかないようなリビングダイニングでは慎重さを要すると思ったほうがいい。電球に何を使うかにもよるが、(結構な個数を設置するため)しょっちゅう交換しなければならないこともあり得、面倒だ。1個くらい点いてなくても大勢に影響はないが、それはそれで違和感を抱えることになるだろう。
天井は高さも大事だが、土地の条件や専有面積など与えられた状況の中で平面性やインテリアコーディネイトのしやすさ、メンテナンスなど総合的に勘案して最適解かどうかを判断したい。このあたりは、デベロッパーの経験値が大きく反映されるところでもあるのだが、買い手の目利きが何より重要である。