春のおもてなし
この季節は、連日友人知人を招いてパーティが…そんな約50坪のワンベッドルームにサブタイトルを付けるとするならば―超都心の茶室付き別荘。
玄関から解説しよう。と、その前に、あらかじめ知識として押さえておきたいことがある。都市型マンションに見かける「内廊下」だ。プライバシーを守るメリットはあるが、室内内廊下の割合がとくに角部屋は高くなる。だが、上の間取りでは逆に幅を広め、アートを飾るシェルフ(棚)を設置。ギャラリー空間に見立てるという大胆な発想だ。正面には茶室を。ゲスト(それも外国人?)を招く機会の多い生活スタイルを想定したのだろう。
柱が目立たないように設えた収納にも注目。何かと荷物の多いシューズインクローゼットの扉は、出し入れ時のストレスがないよう、両開きだ。些細なことだが、あまりないアイデアといえる。住み手の目線でシミュレーションしなければこうはならない。
扉は、リビング入口の2枚引き戸も有効だ。毎春、約27.6畳もの大きなリビングダイニングは、少し狭さを感じるほど来客であふれかえるだろう。その際、壁の中にスッキリと吸い込まれる引き扉は、重宝するに違いない。クローズドキッチンの天板の長さも、もてなしの証し。プロの料理人も腕をふるえるだけのゆとりがある。
プライバシーとの仕切りも明確に。ドレッサールームのサイズは、こちらを本宅に替える可能性を否定しない。2ボールの洗面に特大バス。2トイレもポイント。ベッド数を問わず、ラグジュアリーな空間に必要最低限のセッティングはこうだ、と言わんばかりのスペックである。
梁、窓枠も視界から排除、背景に徹した上質な空間
主は眺望。住空間はあくまで従である。したがって、その高級感が目立ってはならない。が、この写真をみてさすが実績のある事業主あるいは設計会社だと感じ入った人は多いのでは。天井高は2.73m。左の窓の幅は3.5m以上。名脇役のおかげで、主役は一層引き立った。
千代田区九段南。地下鉄東西線「九段下」駅徒歩8分。エントランスへ誘う階段は、瀬戸内海大島産の一枚岩の御影石を積み上げた。居室のフローリングは竹(バンブー)を採用したが、これはのちに東京ミッドタウンにも使われた床材である。地上15階建て、総戸数64戸。設計、施工は鹿島建設。分譲は三井不動産。2004年竣工。
「住み替えやリフォームの参考になるマンションの間取り」(『都心に住む』by SUUMO連載を再編)より抜粋しました。