測りきれない立体空間の価値
マンションの価格比較は、坪や平米等、単価に割り戻して行うのが通例。新築の価格表を見れば一目瞭然、上階へ行くほど単価は上がる。だが、当該住戸に特別なプラス要素があれば、並び通りではなく割高に。専用庭やルーフバルコニー付、角住戸などがわかりやすい例だ。
分譲価格を設定するデベロッパーは、そのような特殊住戸にどれくらい加点すべきか過去の経験値から算出するが、なかには魅力の程を測りきれない空間もあるだろう。例えば上掲のような立体空間に特徴を持ったケースである。
(略)
縦に広がる視界を邪魔しないように、窓ガラスは片開きとフィックスを多用。キッチンの窓は飛び出た外壁との組み合わせが効果的で、こもりがちなスペースにおいて、開放感とプライバシーの両立が上手く図れている。
南面間口の広さもメリット。陽の入り方は、立体空間の特徴を増長させるだろう。快適な居心地はこの住戸ならではのもの。価格で表現する作業は容易ではなかったと推察できる。それほど、未体験の魅力が詰まった一例といえる。
縦の広がりを活かした空間設計
大きな吹抜けのある空間は、面積以上のゆとりを感じられるメリットに加え、上下別々に居ても、常に家族の気配を感じることができる。不思議な安堵感に包まれるのだ。実際に暮らしてみると、平面の大小では得ることのない心地よさを覚えることだろう。
渋谷区上原。千代田線「代々木上原」駅徒歩8分。京王井の頭線「駒場東大前」駅同11分。南方に「東京大学駒場キャンパス」を、東方に「代々木公園」を構える閑静な住宅街である。低層の家並みとひと区画当たりの敷地面積の大きさが特徴。地上3階地下1階建て。総戸数26戸。分譲、施工住友不動産。2003年竣工。
著書「住み替え、リフォームの参考にしたいマンションの間取り(『都心に住む by SUUMO』 連載企画 【間取りに恋して】再編)」より一部転載