上等なエアコンの効き目
さすがにこの時期になると冷房の出番は少なくなった。とはいえ、夏の猛暑はもはや異常気象とはいえず、来夏以降も熱中症対策は連呼されることになるだろう。いまやエアコンは住まいに欠かせない存在なのである。
空調は、室内の温度と湿度を調整することが主な目的。だが、インテリアや住み心地に大いに影響を及ぼす設備であることはあまり知られていないかもしれない。最も普及しているのが壁掛け式。設置は容易だが、取り付け位置をほぼ限定し、インテリアのイメージを損ねやすいといわれている。高級マンションの定番は天井埋め込み式。これは天井を下げやすく、高性能ゆえか、人体に風を感じやすいと指摘されてもいる。そこで今回取り上げるのが「全館集中冷暖房システム」。
上の図面には吹き出し口も記した。本体は廊下の天井裏に仕舞っている。24時間365日つけっ放しまで想定した空調性能は、廊下や水周り問わず適温を保つ。空間の温度差が少ないため体に優しく、空間もすっきりとし、そして間取りの自由度も広げてくれる。
もとより家具の配置がイメージしやすいプランである。柱を上手く収め、全室整形の空間に。玄関から直接向かえる2つの居室はシャワーブース付。ある程度子どもが大きくなった世帯にとっては望ましい動線かも知れない。自宅の一部を仕事場として使っている人もその利点を共有できよう。主寝室サイドはゆったりとしている。窓はフィクスと開閉を抑えたものを組み合わせているが、これも自然換気の必要が少ない空調特性と釣り合いが取れている。ホテルライクなライフスタイルには優れた空調設備が不可欠である。
(資料提供:三菱地所レジデンス)
セパートでは難しい、空調の風向きや強弱
空調の性能は部屋のサイズに合わせるのが基本。だが、実際に人が感じる「丁度良い」状態を目指すには、吹き出し口の向きや風の強さが影響する。居る場所によっても快適さは異なるから厄介だ。従って、インテリアや人の位置を考慮しながら空調を設計するのが理想といえる。
渋谷区南平台町。山手線「渋谷」駅から徒歩9分。東急東横線「代官山」駅徒歩12分。繁華街近くにあるとは思えない閑静な住宅街である。建物は地下1階地上5階建て。全館空調システム「エアロテック」を搭載した数少ないマンションの1棟。総戸数13戸。分譲:三菱地所、設計、施工:東急建設。2006年竣工。
著書「住み替え、リフォームの参考にしたいマンションの間取り(『都心に住む by SUUMO』 連載企画 【間取りに恋して】再編)」より転載