「これからマンション価格はどうなるか?」。コロナの影響で今後の不動産市場に注目が集まっている。今朝の日経新聞はそれなりに紙面を割いていた。「寡占状態にある大手は、堅調な需要を根拠に新築分譲は強気を継続」としながらも「推し量り切れない」とのコメントも。
リーマンショックや震災時を参考にするも、まったく同様な変化が起きるとも思えない。リスクによって、地域ごとに変動率は異なるものなのか。簡単ではあるが、検証を試みた。
これほど違う、バブルの移動範囲
以下のグラフは、
・首都圏
・東京都 都心3区
・埼玉県 西部地区
・千葉県 常磐地区
・神奈川県 横浜市
の順に並んでいる。
期間は、リーマンショックのあった「2008年」から直近「2020年3月」まで
・X軸に価格変動(成約単価 前年比)
・Y軸に在庫変動(在庫件数 前年比)
・バブルは取引量の状況(成約件数 前年比)
を月毎にバブルであらわしたもの。
ひと目でわかるが、バブルチャートの範囲が地域によって随分と異なっている。
都心3区は、ボラティリティが異常に大きい。不況では、成約単価が前年比で2度も20%超ダウンする、あるいは在庫件数が同80%以上も増加。一方で、好況期は最も多く成約単価が同二ケタアップを記録する。これらすべて、都心3区のみで起きた現象である。
埼玉県西部地区は、価格変動(横の広がり)こそあれ、在庫の波は小さい。「好況・不況と住み替えはさほど連動しない」そんな推察が成り立ちそうだ。
二ケタ減、一度もない「横浜市」
最もバブルの広がりが小さいのは、地区別には「横浜市」である。驚くことに、成約単価前年比で二ケタマイナスが一度もなかった。
もっともサンプル数が多いことも理由に挙げられる。都心3区が月間100件~200件、埼玉県西部地区が同100件前後、千葉県常磐地区が70-100件程度に対し、横浜市は300件台である。
リスクで異なる在庫の増え方
下のグラフは、在庫件数前年比を折れ線グラフであらわしたものだ。
リーマンショック前後では、都心3区が急増。しかしながら、東日本大震災では千葉県常磐地区が最も増加著しく、また都心3区よりも横浜市や首都圏が高く、埼玉県西部地区は増加率が一番小さかった。
2015年から2017年にかけて都心3区は再び在庫が急増するが、これはアベノミクスがスタートした直後の在庫急減の反動と思われる。が、急伸した都心相場にのって、高値売却をねらうオーナーが増え始めたことも影響しているだろうと推察する。
いずれにしても、下落局面を振り返れば、地域によって「相場に影響を及ぼす在庫件数の変動の違い」が明確で、またそれは起こったリスクの内容によって「強弱の違い」が生じていたことがわかる。